「ダウン症は個性」と言うことがあります。
個性という言葉自体、肯定的な意味で用いられることから、「ダウン症は個性」と言うとダウン症を肯定的に感じられる表現となります。
でも個性とは、優しいとか怒りっぽいとか性格的なものをイメージする方も多いと思います。
そういう個性の意味の中に「ダウン症」を含めることについて何かしっくりこないところがありましたので私なりに考えてみました。
目次
1.個性とは何か
個性とは何でしょうか。
辞書では以下のように説明しています。
個人または個体・個物に備わった、そのもの特有の性質。個人性。パーソナリティー。「個性の尊重」「仕事に個性を生かす」「個性が強い打撃フォーム」
引用 デジタル大辞泉
つまり他の誰でもないその人だけが持つ、「○○らしさ」が個性ということになります。
心理学では、気質、性格、能力の3つの複合体と考えることが多いようです。
例えば、最初に挙げた「優しい」、「怒りっぽい」などの性格は個性であり、
「温和な」、「粗暴な」などの気質も個性です。
2.「障がい」も個性?
Wikipediaによると個性は、以下のように説明しています。
日本では往々にして肯定的な意味で用いられるが、本来は存在する上での差異を指しているだけに、必ずしも有益であったりするものばかりではない。
近年では、身体障害者の身体的特徴や精神障害者の症状をも、その人の個性であるという考え方も生まれている。
いずれにせよ、たとえ客観的には不自由を強いる特徴であっても、それがその人らしさを形成する上で、必要不可欠な要素となっているのであれば、立派に個性の一端と呼ぶ事ができる。引用 Wikipedia
つまり障がい者の身体的特徴などが、「○○らしさ」を形成するうえで必要不可欠な要素であるならば、個性の一つと言えるこということです。
3.いつから「障がい」も個性と言われるようになったのか?
乙武さんの「五体不満足」が出版された以降、「障がいは個性」と呼ばれるようになったようです。
ただ実は、乙武さん自身は、「障がいは個性」と言ったことは一度もないそうです。
乙武さんは、次のように述べています。
日本で「個性」という言葉は、「個性があって魅力的だね」というふうにプラスの意味で使われることが多いですよね。となると、じゃあ、障害が果たしてそのままでも魅力的であり、自ら身に付けたいと思うものかと考えた時、やっぱり望んで障害を持ちたいという人はいないと思うんです。それなのに、あえてプラスのこととして語られることの多い「個性」という言葉を使うというのは、僕としては無理をして強がっているような気がしてならないんです。
乙武さんは、「障がい」は個性ではなく、特徴だと述べています。
(障がいは)僕はその人の「特徴」だと思っています。例えば、背の高い人もいれば低い人もいる。太っている人もいれば痩せている人もいる。
(途中略)
能力や性格にも、それぞれの特徴がある。障害をもつということは、その中の一つだと考えています。
特徴とは、他と比較して特に目立ったことをいいます。
個性との違いは、個性はプラスの意味で使われることが多いですが、特徴はプラス面以外にマイナス面も含むところです。
「障がいは個性」と言うと「障がい」を無理強いしてプラスにしているところに乙武さんは違和感があるようです。
4.結局どうなのか?
ダウン症を肯定的にとらえるため、「ダウン症は個性」と言う言い方も理解できますし、「障がい」にプラス面で使われる個性を使うことに違和感があるのも理解できます。
そういうことで考えると「ダウン症は個性」という言い方は、万人向けではないのかもしれません。