ダウン症者の中には、成人期において退行することがあります。
退行様症状(※)と呼ばれています。
※以前は急激退行症と呼ばれていました。
20歳前後において1~2年という短い期間のうちに退行すると言われています。
ただ、すべてのダウン症者に起こるわけではありません。
頻度については良くわかっていません。
目次
1.症状
症状としては、あまりしゃべらなくなる、動作がゆっくりとなる、閉じこもるようになる、睡眠障害などが表れます。
「ダウン症候群における社会性に関連する能力の退行様症状」の診断の手引きによると以下の項目において、5 以上が該当する場合は「確定」、2~4項目が該当するの場合は「疑い」、0~1 項目が該当する場合は「否定」となっています。
①動作緩慢
②乏しい表情
③会話・発語の減少
④対人関係において、反応が乏しい
⑤興味消失
⑥閉じこもり
⑦睡眠障害
⑧食欲不振
⑨体重減少引用 「ダウン症候群における社会性に関連する能力の退行様症状」の診断の手引き
2.原因
原因ですが、21番目の染色体が3本あることから、21番目染色体が作り出すアミロイド前駆体たんぱく質が通常の1.5倍あり、そのことによって脳内のアミロイドタンパク質が多く発生し、退行様症状がでると考えられています。
3.治療方法
治療方法はまだ確立されていません。
しかし、この退行様症状の治療法としてアルツハイマー病治療薬である「塩酸ドネペジル」が効果があったという報告があります。
論文 ダウン症候群における社会性に関連する能力の退行様症状に対し塩酸ドネペジルが著効したダウン症候群の14歳女児例
論文では、14歳のダウン症のある少女に「塩酸ドネペジル」を投与したところ、効果があったものです。
まだ1例であるため本当に効果があるかどうかは今後、症例が増えることで証明されることを期待しています。