1.優生学とは
優生学とは、1883年にフランシス・ゴルトンが考えた造語です。
優生学の意味としては、批判を恐れず簡単に言うと、
優れた能力を持っている父親・母親同士の結婚・出産して優れた能力の子孫を残す、
これを繰り返すことで人類の進歩を促す
ということです。
フランシス・ゴルトンは、進化論を提唱したチャールズ・ダーウィンの従兄弟であり、進化論に影響された考え方です。
この方法を行えば、優れていないものは、ダーウィンの進化論(自然淘汰)によって淘汰されていくという考え方です。
この優生学は、いろいろと問題がある考え方です。
2.ナチスドイツによるT4作戦
ナチスドイツによるT4作戦とは、この優生学の考え方に基づく、障がい者などを安楽死させるという恐ろしい施策のことです。
書き記すこともはばかられますが、ドイツ民族の血を純粋に保つため、ドイツ民族の血を劣化させる遺伝病、精神病者などを断種(子供を産めなくしてしまう)または安楽死させるというものです。
このようにすることで遺伝病、精神病者が淘汰されるというものです。
この施策により、15万人から20万人以上が犠牲になったと言われています。
しかし、この施策は倫理的な問題以前にまったく効果がないものです。
例えばダウン症のほとんどは、親からの遺伝ではなく、1000人に一人生まれるという誰でも起こり得ることだからです。
他の障がいも必ずしも遺伝するとは限りません。
3.国家による優生政策
実は、この優生学に基づいた政策は、ナチスドイツ以外にも、多くの国が行っています。
アメリカでは、1907年に断種法が制定されます。
この法律では、精神障害者等に対して強制的に子どもが産めないように不妊手術をするというものでした。
日本では、優生保護法による不妊手術は、1948年から1996年にかけて2万5000件にも及んだそうです。
1996年といったら、それほど昔ではありません。
とても驚くべきことです。
4.相模原障害者施設殺傷事件
相模原障害者施設殺傷事件は、記憶されている方も多いと思いますが、2016年7月26日に神奈川県立の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」において、元施設職員が施設に侵入し、19名を刺殺したというものです。
犯人は、「障害者はいなくなればいい」という発言を繰り返し、また重度障害者の安楽死についての発言もあったとされます。
まさに優生学の思想です。
この事件をきっかけにネット上では、優生学の思想に同調する意見が多かったようです。(とても残念なことですが)
5.どう考えたらよいか
「健常者も障がい者も命の重さは同じである」という原則に基づき、考えるべきでしょう。
以前、次の記事を書きましたが、自分自身に置き換えてみれば理解できることです。
記事 みんな命の重さは同じ
もし、他の人よりも命が軽いと言われたらどう思うかです。
誰だって自分の命が他の人よりも軽いとは思わないでしょう。
健常者、障がい者に関わりなくみんなそうです。
全ての命の重さは同じです。
同じ重さの命であれば、優生学の思想に基づき、人為的に淘汰される方法は間違ったものとなります。