「ダウン症の歴史」は、カナダ・モントリオールのルギル大学の社会政策研究所カナダ研究科長および歴史学教授であるデイヴィッド・ライト博士がかかれた本です。
タイトルの通り、近代から現代までのダウン症の歴史について書かれた本です。
プロローグには、デイヴィッド・ライト博士とダウン症をもった彼の妹について書かれています。
妹が生まれたのは、1960年代後半であると思われますが、興味深いのは健常児と同じように幼稚園に入園させようとしたり、妹が10代の頃には民間企業に働けるように雇用者を説得したりしていたことです。
当時としては画期的だったのではないでしょうか。
また、アパートの一室を借りて一人暮らしを始め、その後、40年以上も施設に入所していた男性と結婚をしています。
博士の話では、カナダにおいてダウン症の方が結婚した初めての事例ではないかということでした。
とても興味深いことであり、現在であっても先進的であると思います。
「ダウン症の歴史」の目次は以下のようになっています。
- プロローグ
- 第1章 哲学者が見た白痴
- 第2章 私たちの中の蒙古人
- 第3章 猿線
- 第4章 21トリソミー
- 第5章 一般の社会の中へ
- エピローグ ダウン症の未来
第1章では、ダウン症という先天性疾患が分かる以前に使用されていた「白痴」について述べています。(今では差別用語として使われていません)
第2章では、「ダウン症」の名称のもとになったジョン・ラングドン・ダウンの紹介です。当初、ダウン症は外的特徴から蒙古症と呼ばれていました。
第3章では、ダウン症の特徴の一つである猿線の発見についてです。この猿線が染色体異常の発見のヒントになりました。
第4章では、ジェローム・ルジューヌによる余分な21番目の染色体の発見について述べています。この頃にダウン症という言葉が誕生していまする
第5章では、施設でのケアから地域におけるケアへの変化について述べています。普通級で教育をうける権利などの法廷闘争が行われたことについて書かれています。
ダウン症の歴史を知る画期的な名著です。
このような歴史に着目した書籍は、この「ダウン症の歴史」以外にはありません。
私がお勧めする1冊です。