「本当はあまり知られていないダウン症のはなし―ダウン症は「わかって」いない (LD協会・知識の森シリーズ) 」は、日本ダウン症協会の代表理事である玉井邦夫 先生が書かれた本です。
玉井邦夫 先生は、大正大学の臨床心理学科 教授でもあります。
専門は、「障害児心理学、被虐待児と家族の支援、学校臨床、発達査定」です。(大正大学HPより)
カウンセリングもされているようですのでお世話になった方もいると思います。
さて「本当はあまり知られていないダウン症のはなし」は、玉井邦夫 先生の講演会の内容をまとめたものです。
以前、玉井邦夫 先生の講演を聞いたことがあります。
主にダウン症の研究成果、療育、出生前診断など様々な視点から述べられておりとても勉強になりました。(目から鱗になりました)
玉井 先生は学者でもあるため、理論的な説明には説得力があります。
先生には、ダウン症をもった息子さんがおり、息子を育てた実体験についても述べられていました。
また先生の講演を聞かれたことがない方は、一度は聞かれた方が良いと思います。
基本的にはこの本に書かれている内容について講演されていました。
「本当はあまり知られていないダウン症のはなし」の目次は以下の通りです。
- 第1章 本当はあまり知られていないダウン症のはなし
- 第2章 ダウン症のある人の青年期・成人期
- 第3章 ダウン症の家族支援
- 第4章 出生前診断をめぐって
この本の冒頭で「天使という画一的な言葉でカテゴライズして欲しくない」と書かれていました。
実際にどこが天使かと思うことが毎日繰り返されており、とても人間的だと述べられています。
かなり意表を突かれたのと同時に、玉井 先生は現実を見ているのだと思いました。
また興味深かったのは、ダウン症者は頭の中でどのように情報を処理しているかということです。
(第1章に記載)
例えば
- 全体的な情報(グローバル情報)を理解することは得意ですが、個別の情報(ローカル情報)の理解は不得意
- 意味記憶は苦手でエピソード記憶が得意(※)
※ 関連記事 ダウン症者の記憶の特徴から覚えさせる方法を変えてみる
このような情報処理の仕方をしているため、ダウン症者によくある頑固な特性などが生まれるそうです。
第2章では、急激退行とその原因などについて書かれています。
従来の急激退行の考え方とは違い、環境の変化が原因ではないかということでした。
第3章では、障害告知時のショックから受容するのでのプロセスについて書かれています。
当ブログでも以前、アンケート調査を行いました。
関連記事 ダウン症告知のショックから前向きになるまでの期間は?(ドローターモデルによる独自アンケート分析結果)
第4章では、新しい出生前診断の騒動について書かれています。
この新しい出生前診断は、ダウン症者に与えた影響は大きかったようです。
なぜダウン症だけが標的にされるのかという疑問について述べられています。
講演会でも玉井先生が言われていますが、日本ダウン症協会は、出生前診断に反対している訳ではないということです。
どうもマスコミが作り上げた図式のようで日本ダウン症協会は、正確な情報の提供とダウン症者への配慮をお願いしているだけとのことでした。
詳しく知りたい方は、下記の「本当はあまり知られていないダウン症のはなし」を読まれると良いと思います。