昔、優生学という考え方がありました
優生学の意味としては、批判を恐れず簡単に言うと、
「優れた能力を持っている父親・母親同士の結婚・出産して優れた能力の子孫を残す、
これを繰り返すことで人類の進歩を促す」
というものです。
詳しくは次の記事を参照して下さい。
この優生学を法律化したものが、旧優生保護法です。
ナチスドイツは、優生学に基づく「断種法」のもとT4作戦により、障がい者などを安楽死させるという恐ろしいことを実施していました。
日本では、優生保護法のもと、障がい者に対する不妊手術が1948年から1996年にかけて2万5000件を実施していました。
現在60代女性であるAさんは、10歳代当時、この不妊手術を受けました。
このAさんが、知的障がいなどを理由に不妊手術を強制したのは、日本国憲法第13条「個人の尊重(尊厳)、幸福追求権」に違反であるとして国を相手に提訴するそうです。
Aさんには、重い知的障がいがあったため、旧優生保護法に基づき不妊手術が行われましたが、事前に手術について自治体から説明を受けたことはないそうです。
当然、同意もした記憶はありません。
この不妊手術が原因で縁談もなくなったそうです。
Aさんは現在も独身です。
Aさんは、2017年6月に自治体に対して「優生手術台帳」の開示請求を行いました。
その結果、Aさんは「遺伝性精神薄弱」を理由に卵巣と子宮を結ぶ卵管の峡部を縛る手術が行われていたことが分かりました。
当時、医師が必要と判断した場合、都道府県の審査会の決定により、障がい(遺伝性疾患、知的障がい)がある男性、女性を対象に不妊手術を強制していました。
2016年、国連の女性差別撤廃委員会は、旧優生保護法の実態調査を行い、対象者に補償するよう日本国政府に勧告しました。
日本弁護士連合会では、2017年2月22日に「旧優生保護法下において実施された優生思想に基づく優生手術及び人工中絶に対する補償等の適切な措置を求める意見書」を公表しています。
今回のAさんの提訴は、こういった情勢を踏まえたものです。