「ダウン症のない世界」というドキュメンタリー番組を観ました。
2016年、イギリスで制作されたドキュメンタリーで日本ではNHKのBS世界のドキュメンタリーで放映されました。
リクエストは多いようなので再放送すると思います。
サリー・フィリップスというイギリスの女優・脚本家が登場します。
彼女には、ダウン症のある息子がいます。
彼女は、問いかけます。
「私たちは、どんな社会を目指すべきなのか?その社会にだれを受け入れるべきなのか?」
この問いは、この番組の大きなテーマとなっています。
イギリスでは、出生前診断でダウン症と診断された妊婦の9割は中絶を選択しています。
そのことについては、次の記事に詳細を書きました。
このドキュメンタリーでは、出生前診断について多く語られています。
まとめると以下のような内容でした。
出生前診断に関する学者の立場
この番組では、さまざまな学者へインタビューを行いますが、出生前診断については知りたいという需要にこたえるために研究しているというのが学者の共通した立場でした。
決してダウン症のある人達の廃除が目的ではないということを述べています。
そして、問題の本質は科学の進歩ではないとも語っています。
ダウン症の教育に貢献した学者の話
ダウン症児は、イギリスでは以前、学校にいけなかったそうですが、1981年から普通学校に行けるようになったそうです。
その道を切り開いたのは、スー・バックリー ポーツマス大学 心理学教授です。
彼女の話では、ダウン症児は耳で聞いて学習するのは難しいが、目で見て学習するのは得意であるため、そのことに気付けば段違いの成果が得られるということでした。
適切な指導をすれば8割は文章が読めるようになるそうです。
大多数が普通学校で勉強して、就職もして自立しているそうです。
決して排除される必要性がある人たちではありません。
このことからも、ダウン症と診断されたことが中絶の理由になるべきではないと述べています。
このままではダウン症のない世界になってしまうのでは
障がい者のケアでは世界一のアイスランドにおいて、ダウン症の可能性が高いと診断された妊婦は100%中絶しているそうです。
この結果から想像されることは、同じことがイギリスでも起きた場合、そのうちダウン症者はいなくなってしまうということです。
ダウン症者などの障がい者への支援は進んでいる一方で、矛盾していますがダウン症を理由にした中絶を容認しているという逆の方向に進んでいるようです。
告知の方法を見直すべきでは
出演者の何人かは、出産するか中絶するかは妊娠した本人に委ねられていると語っています。
ダウン症の告知がどのように与えられてどのような情報が与えられるかが母親のその後を大きく左右すると言えます。
しかし、イギリスには出生前診断でダウン症と診断された妊婦の相談するための施設はありますが、必ずしも専門家が対応している訳ではなく情報の与え方も不十分な印象でした。
近い将来、遺伝子検査は珍しくなくなる
ラジーブ・カーンという人は、自分の息子の遺伝情報を解読したことで世の中を驚かせた人物です。
彼が言うには、近い将来、遺伝子検査は珍しくなくなるということでした。
出生前診断どころが、遺伝子検査でダウン症以外の疾患も検知可能となります。
さらに遺伝子情報を自ら操作することもできることも予想されます。
これは、以前、紹介した映画「カダカ」の世界です。
最後に
サリー・フィリップスは、研究が進み選択できることが増えると、どんな人が置き去りになるのか不安を語っていました。
最初にサリー・フィリップスが問いかけた質問は、次の通りでしたが、
「私たちは、どんな社会を目指すべきなのか?その社会にだれを受け入れるべきなのか?」
「将来、目指している社会では、誰が排除されていくのか?」という問いのように聞こえました。