ダウン症に関しては、さまざまな意見があります。
ダウン症児を持つ親であっても意見は必ずしも一枚板である訳ではありません。
このブログでは何度も記事にしたテーマを意見の対立という切り口でまとめてみました。
こうやって意見の対立をまとめてみると中には悩ましい対立もあります。
1.出生前診断による命の選別
出生前診断とは、生まれてくる前に子供に先天的な疾患がないかどうかを調べる検査のことです。
最近は、新型出生前診断の登場により、より安全、簡単に精度が高い検査が出来るようになりました。
2016年の調査では、出生前診断を受けた母親のうち、96%は中絶を選択しているというニュースが大きく報道されました。
この出生前診断による意見の対立は以下のようなものです。
①「命の選別」につながる「出生前診断」は許すべきではない
②経済的、体力的理由で障がい児を育てられない場合もあるため「出生前診断」は認めるべき
どちらも正しい意見です。
中にはダウン症児を出産した親が二人目を出産する際、出生前診断を受けるケースが多いと聞きます。
やはり経済的、体力的な理由からなのでしょう。
自らもダウン症者である岩元綾さんは、次のように述べています。
家族にかかる子育ての負担の重さや障害者の暮らしを支える施策、体制の不十分さがあるでしょう。
この意見の対立を解消するためには、岩元綾さんが言われている通り、障がい者を支える施策、体制が充実している必要があります。
決して障がい者を持つ家族が不利にならないような社会を作る必要があります。
岩元綾さんについては次の記事を参照して下さい。
2.ダウン症改善させる化合物「アルジャーノン」
2017年、ダウン症改善される化合物「アルジャーノン」が京都大学で発表されました。
この化合物「アルジャーノン」は、ダウン症の合併症の一つである「知的障がい」を改善させるものです。
なお、この化合物は、胎児の段階でないと使用することが出来ません。
出産後の児童には使えないということです。
この化合物「アルジャーノン」には、次の意見の対立があります。
①化合物「アルジャーノン」は「命の選別」につながる「出生前診断」が前提にあるため容認できない
②「知的障がい」が改善できるのであれば使用したい
ネット上の反応を見る限り、否定的な意見が多かったように見えます。
しかし、「知的障がい」が改善されるのであれば使いたいと思う親もおり、同じダウン症児を持つ親の中で意見の違いに苦しんでいる方もいました。
私が行った調査では、出生前診断に前向きな方の中で「アルジャーノン」が使えることで中絶する割合が減少する傾向があることが分かりました。
3.ダウン症児は不幸か?
ダウン症児は不幸であると考えている方は多いのではないでしょうか。
厚生労働省よる意識調査によるとダウン症の人の9割が「毎日幸せ」ということでした。
日本人の幸福度ランキングは世界的に見て低いようです。
この結果を見る限り、健常者よりも幸せな人生を歩んでいるようです。
4.就学先(小学校普通級、特別支援級、特別支援学校)の選択
ダウン症児を持つ親の中には小学校の普通級に入れたいと思う方が多いと思います。
以前、次のアンケート調査を行いました。
その結果から小学校の普通級に入れる時については以下の意見の対立があるようです。
①他の子の勉強に影響があるため普通級に入れることに疑問がある
②健常児とのふれあいを大切にしたいため普通級に入れたい
障害を持った児童が多くの時間を通常学級で教育を受けるインクルージョン教育が世界的な流れとなっています。
しかし、他の子の勉強に影響があるなど否定的な意見があるのも事実です。
現状、真のインクルージョン教育の実現に向けて模索している段階であると言えると思います。